月刊『ジロリート』とは、コンサートフラメンコギター協会が発行する「ふぁるせぇた」に寄生する世界初の刊内寄生紙です。

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年の瀬に思う          2003年12月25日 発行

 今年も残りわずかとなった。3年前に大腸憩室穿孔性の腹膜炎で倒れ、1年半に3度の手術を経て元気になったかと思ったら、昨年肺梗塞でまたしても入院。それから1年が過ぎやっともとの生活に戻れ、健康の有難さを実感している。そんな中で、今年はいい年だったと思う。ギタリスト生活25周年という節目であり、今年発売のCD「スペインの魅惑」が大変好評で嬉しい限り、そして極めつけは秋の川西市民文化賞の受賞であった。

 以前、散々飲んでいたお酒だが、薬の関係で1年間絶ち、最近やっと復活できた。量を過ごさないように心がけており、飲み過ぎることはないが、その分、一口一口の密度が濃くて美味しいこと…。一日一日を大切に生きるように、一口一口を楽しむ、一音一音を大切に弾く…。

 先日、ギター教室の発表会のひとつ「SUNDAY CONCERT」を行ない、門下生出演者の成長振りを大変嬉しく思っている。私自身、日本でのギター教室の入門経験が殆どないため、レッスンや発表会は私の考え方で自分流にやってきた。手探りではあったが、本番を通じて成長するという私自身の経験から、「同じ曲を何度弾いてもかまわない」という方針のもと、ひとつの曲を仕上げていくことにこだわって指導してきた。

 誰でもはじめから上手く弾けるわけはなく、失敗を重ねて成長してゆく。「成功するのも、失敗するのも勉強」という考え方をとれば、演奏がまずくても責められるものではない。この一言で出演者は気が楽になって、かえって上手く弾ける人も多い。やっぱり緊張してしまう人も多いけれど…。独奏はもちろん、重奏でも合奏でも「完全暗譜主義」という厳しい条件だが、はじめは楽譜にこだわっている人も、いつの間にかそれが当然のごとく暗譜しているようになる。「暗譜したときが勉強の始まり」が私の口癖でもある。

 私自身の発表会とも考えている「SUNDAY CONCERT」のお客様は、発表会に出演しない教室の人も多いが、普段から親交の深いコンサートフラメンコギター協会の会員の方たち、私の友人たちが、本当に演奏会として楽しみに来て下さることに大きな喜びを感じている。

 多くの人の感想を聞くところによると、出演者一人一人の演奏の個性が豊かで、聞く方としても飽きが来ない。また、同じ曲を何度も弾くので成長の度合いがわかり、それも面白いとのこと。画一的な指導は私の音楽を押し付けるだけで、芸術としての個性を伸ばすことにはつながらない。「音楽との関わり方」「芸術としての音楽の意味」がわかってもらえれば、自分の音楽はひとりでに広がって行く。私は常にそう思っている。これから3年後、5年後のわが教室は、個性豊かな門下生たちのギタリスト集団となっているだろう。そのますますの成長が見えるようである。

 長すぎてはいけないと思っていた「SUNDAY CONCERT」だが、先日はついに3時間に達してしまった。そろそろ出演人数の限界かな、とも思う。

 私自身も門下生たちの手本となれるよう、健康を維持し、更なる練達で、みんなの前を走り続けたいと思っている。また、ギター音楽としてのフラメンコギターにこだわり、追い求めてきた重みを感じている年の瀬である。

 富士の元宿場町吉原にて
  道折れて雪富士迫る宿の町

 港と富士山の見える公園にて
  田子の浦仏舎利塔と冬の富士

                                                     箸棒