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音響への尽きぬ興味 (2)          2003年6月25日 発行

 4月初め、岐阜のギター制作家、矢入一男氏にギタルパ制作の依頼に行った。矢入氏はギター工場である潟сCリギターの社長で、試作品を何点か作ってもらった後、製品として世に出してもらうつもりであった。最初は工場が多忙ゆえ難色を示していらっしゃった社長だったが、私の弾くギタルパの音色を聞き「いい音だ!」と気に入ってもらい、とりあえず試作品を作って見ようということで製作を請け負って頂ける事になった。

 1年ぐらいかかるかと思っていた試作品の第1号がまもなく完成すると電話をもらったのは5月下旬であった。それから2週間ほどして試作品が届いた。とりあえず私の試作品を模倣したものであるが、さすがにプロの作ったものは仕上がりが市販品のように見える。私の試作品はいかにも手作り風なのだが…。しかし、送られてきた試作品は完成されていなかった。指板の取り付け方や最終的な駒の調整などわからないことが多くあり、私に委ねられてきたのだ。

 早速、手を付けたいところだったが、このところ静岡でのテレビCM出演の撮影やCD録音準備に忙しくて、ヤイリ製のギタルパの仕上げにとりかかれなかったのだが、一段落したのでそろそろ制作研究にはいろうかと思っている。表面板のどこに駒を付けるか、どこに穴を開けるか、楽器の板の厚みをどうするか、そして音響箱となるケースの研究。

 「弦の振動を音に変える」いかに振動エネルギーを効率よく音に変えるか? 弦からもらった板の振動を無駄なく音に変えてやる。身体や柔らかい床など、音にならないものに振動が吸われることを極力防ぐこと。音響の法則である。

 ギタルパの開発を思いついてから、音響への関心や意識が高くなったことは、大きな収穫だと思う。ギターの塗装を保護するつもりで作った木製のギターカバー(ギタージャケットとも呼んでいる)は音量増幅の効果が絶大で、私にとって、いまやコンサートには欠かせないものになってしまった。後ろの客席からもよく見えるようにと考えて作った“携帯ステージ”はよく見えるだけでなく、いすや足台を伝わって音響を高める効果もあり、各地のコンサートで大活躍している。



今後のギタルパの研究課題は山ほどある。また教則本や曲集も作らなければならない。そのために編曲もしなければならないし、指導者の養成だって必要である。ギタルパの大きな特長は、ギタルパを弾くことによってギターの右手の技術が正確になり、ギターの練習の妨げになるものではなく、むしろ確実に上達することである。そんなギタルパの練習をしながら、ふと、こうすればもっと音響がよくなるだろうか? と考えてしまうこのごろである。

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                    夏至の夕(じろう)

 アルコール抜けてもうまし
                    ビールかな(じろう)